ご来店御礼

薬師寺

 今回の企画は「ゴドーを待ちながら」というテーマで古代からの渡来文化の担い手であった「いまきのてひと」にまで思いを馳せる意味合いであり、このコンセプトは大橋邦夫さんにより提案されたものです。今夜は第一弾として市内はぐり町にお住いの宮大工棟梁の直井光男さんがかかわってきた仕事の紹介ということで、その図面や道具を身近で拝見させていただくという貴重な時間を持つことができました。街がそのアイデンティティーというか、風土が育んだ固有の歴史的な背景を見失い、どこにでもある薄っぺらい地方都市になりつつある現在、今日のこの企画の意味する方向性は大変有意義であると考えます。

 しかしながら、直井さんの大変貴重で特異なお仕事のご紹介の後に私の詩とエッセイを大勢の皆さんに公開することには随分気が引けたのですが、朗読の上坂琴江さんと音楽の丸岡君に助けられて今日の運びとなりました。

 私がこのゴドーを25年、四半世紀を経て再開したわけは、実は10年くらい前、それまでの不摂生がたたって二度ほど死にかかったことによるのかもしれません。やりのこしたことがある。あちこち気を使って本当に自分が思っていることを語らなかったかもしれない。あるいは自ら経験してきたことで、少しでも良質な部分を誰かに伝えることができるかもしれないという思いが募り、このブックカフェゴドーを開いたのかもしれません。

 いろんな事柄が作用して現在があるわけですが、少し無理してこの「ゴドー」という店を開いたことで、思ってもみなかったいくつかの出会いがあり、過去のほうに収束してゆくのではない新たな可能性を強く感じています。

本日はご来店ありがとうございました
棟梁直井光男さん大橋邦夫さん、それにスタッフのみなさん
ありがとうございました。

平成27年12月17日
ブックカフェゴドー店主 栗波和夫

イベント開催のお知らせ

今年も気づけばあと半月。
年末の今日この頃、イベントを2つお知らせです。

 

『 ゴドーを待ちながら 』
〜今を問う!「才伎」の警鐘や何処に?〜
第1部 宮大工棟梁 直江光男さんによる「道具の話」
    ○伝統建築の構造や技術、大工道具の解説と実演をしていだだきます。
第2部 ゴドー店主の詩想
    ○朗読、詩にメロディーを、、、、
日時 12月17日(木) 19:00〜
料金 1000円 ※ワンドリンク付

 

『 ローリング・デイ 』
レゲェアーティスト‘シャバジー’によるアコースティックライブ!!
日時 12月27日(日) 開場18:00 開演18:30
料金 投げ銭スタイル

 

両日共、場所はブックカフェゴドー
お問い合わせ先は 0778−42−6711
会場の関係上、事前にご予約いただけると幸いです。

 

広瀬から馬借街道に沿って糠(ぬか)の海へ

糠
 午後から店の仕事が休みだったのでピアノの先生に頼まれた長椅子を作りに池の上の工業試験場にでかけた。もう霙降る十一月だというのに気温は二十度近くもあり天気も良く気分もよかった。ところが工房ではいつもはナイフ作りのSさんが仕事をしているだけなのに今日は越前タンスなどの部材や修理関係で人が出入りし、スペースが狭く年代物の木工機械も空いていなかった。

 それで椅子作りは後日にすることにして広瀬の街道を海岸線に向かって車を走らせた。白山(しらやま)を超えて千合谷、百済のお姫様が開いたという「解雷ヶ(けらが)清水(しょうず)」、ここへは以前お茶やコーヒーのための水を汲みによく訪れていた。

 そこからトンネルを超えて「おーばーざれいんぼう あんだーざーしー」と鼻歌まじりで海へ下る。この「あんだーざしー」を長い間「あなざしー」と詩的に誤解していたものだ。ロッド・スチュアートのボーカルはさておき、ぐねぐねの山道をくだると糠(ぬか)の集落である。この在所からは昭和三十年代、夏過ぎには葛の葉に包まれた塩雲丹(しおうに)、冬は勢以子蟹(せいこかに)。竹かごを何段にも背負い浜の威勢のいいおばさん達がボンネットのあるバスに乗って、我家の玄関先に来ていたものである。

 またこの集落の建築物は谷筋の急斜面に張り付き増殖し続けているようだ。それは小さな世界遺産にしてもいいくらい不思議な形状をなしている。友人で寝屋川の絵描き、石田博氏をお連れしこの集落の雰囲気を表現していただきたいとも思っている。

 この坂道から海にぶつかり右に折れると、乗り合いバスの終点「かれい崎荘」のあたりに平屋のこじんまりした温泉施設ができていた。ひと風呂浴びて帰ろうかなと思い至りその暖簾をくぐった。

 蟹は解禁になりシーズンなのに訪れた時間が早いせいか客は私一人、水平線の一望できる露天風呂も一人っきりである。沖には漁船の孤影が逆光のせいで黒く点在していた。湯上りの休憩室の片隅では液晶テレビの無音の映像が流れ、そのコントラストも鮮やかに、揺らめきながら沈んでゆく夕陽をずっと見ていた。

 話は変わるが対岸の立石岬にある白木村のコンクリートの巨大ボイラーは二十年、事故続きでほとんど稼働することはなかった。文殊の知恵も尽き果て、高価な藻屑に消えそうだが、蟹道楽の客を待つ海岸線はこの秋、活気に満ちていた。しかし古の国府に向かう山越えの峠道はさみしく、暗くなる前に越えたいと思いながらも、武生方面はもうすでに真っ暗であった。何の脈絡もなく不意に太宰の「右大臣実朝」の主調音が聞こえてきた。

平家ハアカルイ、アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。
人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。

栗波 和夫

満月の夜、武生にボスポラス海峡の風を聞いた

ボスボラ海峡 衛星写真

 9月22日のゴドーでは増田真吾 カヌーン(アラビア琴)阿部綾子 ネイ(葦の斜め笛)近藤大貴 ダラブッカ(陶器の太鼓)。三人による「トルコ音楽と中東音楽の話」と名付けられたコンサートが開かれた。増田氏はエジプトで阿部さんはトルコとギリシャで近藤氏はトルコでそれぞれの楽器と師に出会い、学ぶ機会を得たという。三人ともいくつかの表現の手段を経て現在の楽器に行きついている。

 見知らぬ国の楽器と音楽なのでお客さんを集めるのに苦労するだろうなと思いながらも「新しもん好き」の悪い癖が出て彼らのコンサートを引き受けてしまった。告知のための時間があまりなかったが、お願いした人はほとんど皆さん御来店いただいた。それもトルコ音楽に興味を持たれてこられていたのが印象的だった。おかげでキャパが30人ぐらいの空間に40人ぐらい入られた。スタッフや演奏者を入れれば50人近くの人が出入りし、狭くて椅子もなくお帰りになられた方達もいて申し訳なかった。

 演奏の間には風変わりな楽器の説明や、中東音楽に出会ったそれぞれの物語を解説していただき、この企画に参加された皆さんが身を乗り出して聞きいっておられた。特に子供たちが興味深そうで主催者としてはとてもうれしかった。その夜は特別ゲストで武生在住、カザフスタンの弦楽器奏者イナーラさんとご主人の高橋直己さんの口琴が合流されコンサートはさらに深みを増し、時を忘れた。演奏がすべて終わっても観客が音楽の余韻の中にあり、誰もお帰りにならないので営業が深夜までになってしまった。うれしい悲鳴である。

 話は変わるが、原発が廃墟のように美しい海を侵食している若狭湾は古代大陸からの渡来文明の受け皿であった。この湾の真ん中にある小浜市では昨年来、古刹を舞台にシルクロード音楽祭が開催されている。国の重要文化財でもある中嶌哲演さんのところの明通寺や羽賀寺といった最高のシチュエイションの中での音楽祭であり、今回ゴドーで構成された「トルコ中東音楽ユニット」とカザフスタンのイナーラさんたちがこの音楽祭参加することができれば音楽的にはより豊かな方向性を秘めることと思われる。

 今回のユニットの皆さん、この満月の夜にイタンブールのバザールの風のにおいを武生ゴドーに届けてくれてありがとう。また、急な呼びかけにもかかわらず狭いスペースいっぱいにご来場いただいた皆さん、深く深く感謝いたします。

ブックカフェゴドー店主  栗波和夫

加賀温泉郷から来た熨斗袋(のしぶくろ)

Noshiawabi【 伊勢の海女による「のしあわび」作りの様子 】

 きまぐれパン屋のsさんがおいしいおいしい酵母パンを配達してくれなくて、代わりに兵庫区福原町三番二号、電話神戸二番、宮内庁御用達「文明堂」神戸店の意味ありげな菓子箱を大事そうに運んできた。おもむろに方形の箱を開けると中から大量の熨斗袋がでてきた。様々にデザインされた和紙の熨斗袋で、土地柄か越前市今立町五箇で漉かれた和紙もあり、裏面には銀座鳩居堂や伊東屋の記しもあり、きわめて貴重なコレクションである。

 気まぐれパン屋さんが言うにはご主人の親せきで加賀温泉郷で三味線を弾き、晩年は後進の指導をされていた方が去年106歳でお亡くなりになった。彼女には近しい身寄りもなく縁ある人がより合い、家のかたづけなどをしたとのこと。高価な三味線や着物などは必要な人に分けられ、この熨斗袋の箱が残ったのでご主人が頂いてきたということである。推測するに芸者衆の舞の音曲としての三味線への代価としてお客さんからいただいた際の熨斗袋を、集めておられたのではないかと思われる。それにしても几帳面な方で、この優れたデザインを選択し、収集するというその美的感性を高く評価したい。

 これも何かの縁と思われ、少し調べてみた。祝儀袋などの表に添えられた白地に内朱の、水引で結ばれた1寸くらいの折り畳まれた紙の薄い立体、その中の黄色の細い短冊が熨斗鮑(のしあわび)の象徴化されものである。伊勢の海女達があわびを取り、うすくのしている上記の絵図のように「のしあわび」は古来不老長寿の縁起物として献上品の表に添えられた経緯がある。また、「のし」の字そのまま小ぶりの袋の右上に記されたものは「わらびのし」。また他には「松葉のし」などがある。

「のし」にまつわる講釈はこれくらいにして、持ち込まれた「のしぶくろ」の日本古来の美のエッセンスを一部公開したい。

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加賀温泉郷の夕暮れ
耳を澄ますと粋な三味の音が聞こえてくる
美しい「のしぶくろ」
どや

ブックカフェゴドー 店主 栗波和夫