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金沢香林坊異聞

その神社は小高い丘の上にあり風の通り道なのか、心地よい「杜の風」が吹いていた。今年も恒例の夏の祭りを控えて掃き清められ、澱みない空気に満ちていた。この在所の郷社として人々に大切に守られてきているのであろう。

最近この朝日町佐々生(さそう)に鎮座する「佐々牟志(ささむし)神社」に何度も出かけてきている。というのもこの数年白山信仰に関わる事象に何故か惹かれることが多く、北陸道から麻生津の泰澄寺、勝山の平泉寺、石徹白の中居神社(ちゅうきょじんじゃ)、そして加賀の那谷寺や白峰村市ノ瀬などに友人たちと連れ立ってでかけている。しかし、これらの地を訪れるのはなぜかいつも雨の日ばかりである。

先日も麻生津の「泰澄さん」のお祭りに立会った帰りに、急遽この神社を訪れた。そしてこの奇妙な名称の誰もいない美しい神社に今日も訪れている。

かくいう私はこれまで神仏など信仰には全く縁がなく、むしろ宗教を盾にして個人の領域に土足で入り込む輩に憎悪の念すら抱いていた。そのせいでこれまで社寺仏閣には物見遊山でしか訪れたことがなかった。

この「佐々牟志神社」訪問については在野の郷土史研究家で料理人でもあるn氏とその奥様に先日お会いしたことから始まった。下克上の最中に南條のホノケ山で一向衆徒に切られた朝倉一門「佐々生光林坊」という武将がいた。この光林坊について金沢から武生の白山(しらやま)に引っ越してこられたこのご夫婦があまりにも熱く語られるので、何かのついでにゆかりのこの神社に出かけてみようと思っていたからである。

鯖江から海に向かい、八田の隧道を抜けて郵便局の次の角を右に曲がり、蝉丸ゆかりの地を超えてゆくと世界に通用するマリンバ製作所の「こおろぎ社」が森の前に現れる。この「こおろぎ社」には以前鯖江の五郎丸にあった頃、仕事がらみで工場を訪問したことがあるが、先代は小学校の黒板と木琴を作っていたとのこと。時代の変化で同業者が次々と廃業してゆく中、マリンバ作りのスペシャリストとして純化していかれたようである。

いつの間にか「佐々牟志神社」がマリンバにすり替わってしまったが、この「こおろぎ社」の向こうに小高い神社の杜がある。

ここがかの「佐々牟志神社」である。
梅雨が明けたのか明けないのか、蒸し暑い日々が続くが
この神社の杜だけは涼やかな風が今日も吹いている。