月別アーカイブ: 2015年2月

山の天狗

大滝神社
夜更けまでの
村の祭りは終わり
夜も明けてしまったのに

神社の裏の
深い山の方から
囃し歌が聞こえてくる

紙漉きや
木挽きの
合いの手の入る歌

誰もいないのに
確かに聞こえてくるんだ

そこいらのおじじは
歌っているのは
山の天狗だという

大杉の上で
天狗は一晩中歌を聴いていたので
そらで覚えてしまって
ひとり口ずさんでいると

夜遊びや
悪さする子供は
山の天狗にさらわれると

今でも
誰もいないのに
村祭りの囃し歌が
深い山の方から聞こえてくる

大人になっても
きれぎれの記憶の中に
そのフレーズが
いつまでも残っているんだ

上記の詩は福井の地で私が参加している詩誌「青魚」に掲載されたものである。「青魚」は昭和五十年から年二回のペースで「鯖江詩の会」より刊行されている。現在、千葉晃弘を中心に運営されている「鯖江詩の会」が先日、福井県文化振興事業団の第二十一回 「野の花文化賞」に推奨され、晴れて受賞の運びとなった。アーカイブスを見ると昭和五十八年、第一回の受賞者は鯖江の助田茂蔵氏であったとのこと。氏は私の父の友人でもあったことで作品がいつも身近にあり、丁寧に製本された和綴じの数冊の本は謄写印刷の域を超え完結した作品としてそこにあった。私たちの「鯖江詩の会」が同じく「野の花文化賞」をいただくことになったことに極めて深き縁を思う。地方のささやかではあるが息の長い活動の励みになる賞賛を得て会員の皆さんと共に喜びを分かち合いたい。

ブックカフェゴドー店主 栗波和夫