月別アーカイブ: 2015年12月

ご来店御礼

薬師寺

 今回の企画は「ゴドーを待ちながら」というテーマで古代からの渡来文化の担い手であった「いまきのてひと」にまで思いを馳せる意味合いであり、このコンセプトは大橋邦夫さんにより提案されたものです。今夜は第一弾として市内はぐり町にお住いの宮大工棟梁の直井光男さんがかかわってきた仕事の紹介ということで、その図面や道具を身近で拝見させていただくという貴重な時間を持つことができました。街がそのアイデンティティーというか、風土が育んだ固有の歴史的な背景を見失い、どこにでもある薄っぺらい地方都市になりつつある現在、今日のこの企画の意味する方向性は大変有意義であると考えます。

 しかしながら、直井さんの大変貴重で特異なお仕事のご紹介の後に私の詩とエッセイを大勢の皆さんに公開することには随分気が引けたのですが、朗読の上坂琴江さんと音楽の丸岡君に助けられて今日の運びとなりました。

 私がこのゴドーを25年、四半世紀を経て再開したわけは、実は10年くらい前、それまでの不摂生がたたって二度ほど死にかかったことによるのかもしれません。やりのこしたことがある。あちこち気を使って本当に自分が思っていることを語らなかったかもしれない。あるいは自ら経験してきたことで、少しでも良質な部分を誰かに伝えることができるかもしれないという思いが募り、このブックカフェゴドーを開いたのかもしれません。

 いろんな事柄が作用して現在があるわけですが、少し無理してこの「ゴドー」という店を開いたことで、思ってもみなかったいくつかの出会いがあり、過去のほうに収束してゆくのではない新たな可能性を強く感じています。

本日はご来店ありがとうございました
棟梁直井光男さん大橋邦夫さん、それにスタッフのみなさん
ありがとうございました。

平成27年12月17日
ブックカフェゴドー店主 栗波和夫

イベント開催のお知らせ

今年も気づけばあと半月。
年末の今日この頃、イベントを2つお知らせです。

 

『 ゴドーを待ちながら 』
〜今を問う!「才伎」の警鐘や何処に?〜
第1部 宮大工棟梁 直江光男さんによる「道具の話」
    ○伝統建築の構造や技術、大工道具の解説と実演をしていだだきます。
第2部 ゴドー店主の詩想
    ○朗読、詩にメロディーを、、、、
日時 12月17日(木) 19:00〜
料金 1000円 ※ワンドリンク付

 

『 ローリング・デイ 』
レゲェアーティスト‘シャバジー’によるアコースティックライブ!!
日時 12月27日(日) 開場18:00 開演18:30
料金 投げ銭スタイル

 

両日共、場所はブックカフェゴドー
お問い合わせ先は 0778−42−6711
会場の関係上、事前にご予約いただけると幸いです。

 

広瀬から馬借街道に沿って糠(ぬか)の海へ

糠
 午後から店の仕事が休みだったのでピアノの先生に頼まれた長椅子を作りに池の上の工業試験場にでかけた。もう霙降る十一月だというのに気温は二十度近くもあり天気も良く気分もよかった。ところが工房ではいつもはナイフ作りのSさんが仕事をしているだけなのに今日は越前タンスなどの部材や修理関係で人が出入りし、スペースが狭く年代物の木工機械も空いていなかった。

 それで椅子作りは後日にすることにして広瀬の街道を海岸線に向かって車を走らせた。白山(しらやま)を超えて千合谷、百済のお姫様が開いたという「解雷ヶ(けらが)清水(しょうず)」、ここへは以前お茶やコーヒーのための水を汲みによく訪れていた。

 そこからトンネルを超えて「おーばーざれいんぼう あんだーざーしー」と鼻歌まじりで海へ下る。この「あんだーざしー」を長い間「あなざしー」と詩的に誤解していたものだ。ロッド・スチュアートのボーカルはさておき、ぐねぐねの山道をくだると糠(ぬか)の集落である。この在所からは昭和三十年代、夏過ぎには葛の葉に包まれた塩雲丹(しおうに)、冬は勢以子蟹(せいこかに)。竹かごを何段にも背負い浜の威勢のいいおばさん達がボンネットのあるバスに乗って、我家の玄関先に来ていたものである。

 またこの集落の建築物は谷筋の急斜面に張り付き増殖し続けているようだ。それは小さな世界遺産にしてもいいくらい不思議な形状をなしている。友人で寝屋川の絵描き、石田博氏をお連れしこの集落の雰囲気を表現していただきたいとも思っている。

 この坂道から海にぶつかり右に折れると、乗り合いバスの終点「かれい崎荘」のあたりに平屋のこじんまりした温泉施設ができていた。ひと風呂浴びて帰ろうかなと思い至りその暖簾をくぐった。

 蟹は解禁になりシーズンなのに訪れた時間が早いせいか客は私一人、水平線の一望できる露天風呂も一人っきりである。沖には漁船の孤影が逆光のせいで黒く点在していた。湯上りの休憩室の片隅では液晶テレビの無音の映像が流れ、そのコントラストも鮮やかに、揺らめきながら沈んでゆく夕陽をずっと見ていた。

 話は変わるが対岸の立石岬にある白木村のコンクリートの巨大ボイラーは二十年、事故続きでほとんど稼働することはなかった。文殊の知恵も尽き果て、高価な藻屑に消えそうだが、蟹道楽の客を待つ海岸線はこの秋、活気に満ちていた。しかし古の国府に向かう山越えの峠道はさみしく、暗くなる前に越えたいと思いながらも、武生方面はもうすでに真っ暗であった。何の脈絡もなく不意に太宰の「右大臣実朝」の主調音が聞こえてきた。

平家ハアカルイ、アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。
人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。

栗波 和夫