渡辺京二著 「逝きし世の面影」

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平凡社刊

-SP-幕末の混迷の時代に幕府や諸藩に請われて日本に滞在した外国からの技術者や使節の人々。当時彼らが垣間見た日本の美しい風景 や穏やかな暮らしぶりが紹介されている本である。街道の道中で出会ったそれらのいつくしむべき文明が自分たちの持ち込む西洋近代の手法により、たぶん凌駕 されてゆくだろうという予感の中で書きとめられたものである。その意味を日本人として丁寧に検証してゆく渡辺京二という方の在野の文明批評の本である。

-SP-「実は、一回限りの有機的な個性としての文明が滅んだのだった。それは江戸文明とか德川文明とか俗称されるもので、18世紀初頭に確立し、19世紀を通じて存続した古い日本の生活様式である。」

-SP-前の藤森栄一著の「古道」の書評の中で、「自由を甘受している人たちの語る郷愁などとるにたらぬ」と書いたばかりであるが、決して連続することのない文 明の雪崩には寂寥感を伴うものがある。せめて私たち日本人は近代化の大合唱の中で何を守り、何を捨ててきたのかという検証はしてしかるべきだと思われる。 そをいう意味合いでも読み継いでいきたい名著であると思う。
余談ですが、この本はもうずいぶん前から私が時々参加している小浜市のさる名刹の寺で開かれる毎月の読書会で二度にわたりテキストとして選択された本でもある。ぜひ読んでみてください。