広瀬隆著「原子炉時限爆弾」 「福島原発メルトダウン」

-SP-武生の図書館友の会の会報に書いた新刊紹介(掲載されるかどうかわからないのでこのコーナーにも紹介します)

-SP-もう何十年も前、少年の頃、高校の音楽クラブの夏の合宿で敦賀湾の名子という小さな村のお寺に滞在していたことがある。当時、個人的には色々な問題を抱えていて苦しかったのだけれど、訪れた敦賀の海は光に満ち、遠くの水辺ではしゃぐ少女たちがまぶしかった記憶がある。

-SP-秋には三年六組世界史の山本淑夫先生の提案もあり遠足で立石岬の白く長い砂浜、「水晶ヶ浜」へバスに乗って出かけた。蛇行する海岸線の道は途中崖崩れで 通行止めがあったりはしたが、人家から遠く離れた秋の海は限りなく美しくクラスの誰もが言葉を失った。またその岬の向こうには白い建築物が希望のように建 てられていた。目を瞑ると今でもその懐かしい遠足の海の風景を思い出してしまう。

-SP-春には高校を卒業し政治闘争渦中の大学や見知らぬ大人の中へ離散してゆく子供たちに忘れることのできない思い出を共有した秋のバス旅行は、クラスのひとりひとりにその後どのような心の安らぎをもたらしたであろうか。

-SP-本論の新刊本紹介に戻るが、この私の少年時代の切ない思い出の地には当時、敦賀と美浜に最初の原子力発電所が建築されつつあった。これを新しい時代の経 済成長への希望と思い込んでしまった私たちが、なりふり構わず働いた半世紀後の有様が、子供たちを外で遊ばせることもできない世界であったとはなんという 誤算と無知であるか。スリーマイル島のメルトダウンを経験し、チエルノブイリの爆発と世界的な放射能汚染を経ても、その最後の警告を生かすことなく、まる で他人事のようにふるまう日本人とは日本の為政者とはいったい何であるのか。この悪意ある時代を許してしまった日本の大人達が子供たちを放射能汚染から守 ろうというのもおかしな話だが、子供たちの遺伝子がみるみる劣化してゆくのを見過ごすわけにはいかない。

-SP-「フクシマ」は災害ではなく人災である。つまり人間の知恵で阻止することができた事象である。破壊された原子炉の冷却もいまだままならず外部に大量の放 射能が漏れ続けている。次の大地震が来ないことを祈りながら、原発なき次の時代を再建するためにもぜひこの広瀬隆の二冊の本の購読をお勧めする。